
今回ゲルオルタナが迎え入れる河田政樹と友清ちさとは、それぞれが強い主体を持ちつつも、その主体の内と外を自在に行き来できる作品を生み出しています。
2人のアーティストは、それぞれが持ち寄った作品を自身で設置するのではなく、互いに相手の作品を、異なる時間帯で幾度かにわたり、交互に設置していくという方法で展示を進めます。
これはコラボレーションを目的としたものではありません。
一人の作家にとってもう一人の作家は幽霊的(ここにはいないもの)であり、作品の前に立つ作家はその幽霊的なものの遺言に強制的に自己の分断を迫られるでしょう。
自分の作品に対して無力であることを受け入れ、次の遺言を残すため能動的に作品に関わろうとし、当惑と混乱の中での選択を繰り返す過程で作品は自己完結を免れ、常に変化し続けるものとなりうるのではないでしょうか。
変化とは目的に近づくことでは決してなく、(場合によっては遠ざかる事、目的自体が変化することだってあると思います。)常に様々な現象をニュートラルな状態で受け入れるための一つの方法です。
世の中が常に変化し続けているのと同時に、主体というものは揺れ動き曖昧に存在しています。強くも曖昧な主体とは、刻々と流れる“今”をできる限り鮮明にとらえようとする姿勢であり、作品はその過程で生まれる複数の思考の同時的表出を可能とします。
その姿勢こそこの企画のコンセプト(ゲルオルタナの一貫した思い)であり、今回の二人の作家の幽霊的取り組みそのものなのです。
ゲルオルタナ 小林丈人




搬入設置の期間を長く設け、河田と友清は交互にスペースへ訪れることとなる。
時に二人が出くわすこともあり、時にゲルオルタナのメンバーもスペースへ訪問することもある。
また、それぞれが出品すべき作品を持ち込む際、作家は置き手紙を残す。
それは、自分が持ち込んだ作品の進行についてや、設置における提案(相手の作品の設置案であったり、相手が仮に設置した場所から別の位置へ移動させたなどの報告も含む)である。
それを受け取る側は、ある種幽霊的な相手の存在・痕跡を実感することとなる。
河田政樹 / Kontrapunct / 2011.9.10-10.15 / GALLERY CAPTION(岐阜)/ 展示風景




河田政樹 Masaki Kawada
1973年東京都生まれ
1999年多摩美術大学大学院美術研究科油画専攻修了
主な展覧会
2010「background」藍画廊/東京
「THE LIBRARY ASHIKAGA」足利市立美術館/栃木
「建築家 白井晟一 精神と空間」群馬県立近代美術館/群馬
パナソニック電工 汐留ミュージアム/東京(2011)
2009「よりみち・プロジェクト - いつものドアをあける」
岐阜市文化センター 街並ギャラリー"陽だまりの工房"
および玄関ホール、CAFE COCON、GALLERTY CAPTION、psnd/岐阜
2008「つきかげ」 GALLERY CAPTION/岐阜
2007「By」藍画廊/東京
「観光」GALLERY CAPTION/岐阜
「ニュー・ビジョン・サイタマ III」埼玉県立近代美術館/埼玉
友清ちさと / 「覚醒山脈 keep moving mountainrange」/ 2011/ 50×60×60(P4キャンパス使用)/ ミクストメディア(キャンバス、キャスター、他)
友清ちさと Chisato Tomokiyo
1984年福岡県生まれ
現在東京芸術大学大学院美術研究科油画専攻博士課程在籍中
主な展覧会
2011「覚醒山脈」東京芸術大学院修了作品取手有志展 東京芸大取手校/茨城
2010「覚醒山脈」アーティストレジデンスイン輪島 石川県輪島市旧船木邸
2009 甑アートプロジェクト、アーティストレジデンスイン 鹿児島県甑島
「no name」 横浜ZAIM/ 神奈川、 立誠小学校/ 京都
2008 ユニットいちふじパフォーマンス 東京画廊 /東京
「サスティナブルアートプロジェクト事の縁」 鶯谷小学校 /東京
2007「パートタイムゴッド2」 switch point /東京
「平行山脈」 当時の自宅アパート/神奈川