私たちの中には海があります。
私たちは海を探す旅人です。
海はどこに居ますか。
人は社会という目まぐるしい外的世界から自分という存在のあり方を求める時に自己の中、つまり内的世界に深く潜り込みます。
潜り込んだその先に大きな世界が待ち受けていたとします。
例えばそこは海の様な所かもしれません。
海は隔たれた大陸を繋ぐ一続きの塩水で覆われた所ですが、事物が大量に集まっているという意味もあります。
内的世界へ潜り込んだ先で見つけた海は、情報と経験がカオス化しており、原初的な世界が存在し、そして新たな陸地(外的世界)へ接続していく場である様に思えます。
日々を自覚的に更新し続ける者として海は目標点であり通過点なのです。
出展する二人のアーティスト、羽山まり子と有木岑生は、社会と自己(存在)の曖昧な位置関係に揺れる不安定な心を受容しながら、交わりきらない溝のような原初的な世界を生み出す条件を見出しています。
それはすれ違う事や平行を辿る事ではなく、ねじれの位置の様な立体交差に近いものです。
立体交差では、質の異なったものが対流していき、個として自立するためのエネルギーを放出する場となります。
人間としての活力を失わないために、私たちは今まさにこの立体交差の存在に気づき、能動的に足を踏み入れる必要があります。
本展覧会におけるゲルオルタナというスペースは、アーティストが信じている何かへの理解の場ではなく、「外」から「内」へ潜り、次の「新たな外」を求める者が探す「海のいどころ」という劇場的装置となるでしょう。
田中良太(画家)
羽山まり子 Mariko Hayama
1983 千葉県生まれ
2010 女子美術大学大学院修士課程修了
主な個展・グループ展
2012「川口の新鋭作家展2012」 川口市立アートギャラリーアトリア/埼玉
2010「複合回路vol.4羽山まり子」galleryαM/東京
2009「keep distance」ガレリアnike/東京
2008〜2010「WATARASE Art Project」/栃木・群馬
作品展示・レジデンスの他にプロジェクトの企画・運営を行う。
受賞
2011 川口の新鋭作家展2011入賞/川口市立アートギャラリーアトリア
有木岑生 Mineo Yuki
1980 埼玉生まれ 東京都在住
2003 東京芸術大学美術学部油絵科卒業
主な展覧会
2011「新宿眼科検診」新宿眼科画廊/東京
2010「群馬青年ビエンナーレ」群馬県立近代美術館/群馬
2010「新宿眼科太郎」新宿眼科画廊/東京
2006 Space Kobo & Tomo/東京
2004 フタバ画廊/東京
有木岑生
フランケン
2009 DVD endless-loop
羽山まり子
肉体へ回帰せよ
2012 食品用ラップ、家具、家電、日用品、ワードローブ、他
photo by 加藤健